Yoga

太陽礼拝を分解する(2)

繰り返えし練習される太陽礼拝。
だからこそ、安全で 効果的な練習にしたいもの。

太陽礼拝は動きの中で行われるため、アサナについて細かな確認や修正が難しいのが課題です。

シリーズで それぞれの太陽礼拝の動きと注意点をシリーズで確認しています。


ビハール・スクール・オブ・ヨガの太陽礼拝は全部で12ステップ。
今回は、ポジション2と11を見ていきます。

これまでの確認はこちらから↓

【 ハスタ・ウッタンアサナ 】

ハスタウッタンアサナ、腕を持ち上げるポーズ。
上半身を後方へ伸ばします。

hasta=手、uttana=強く伸ばす
※アルダチャクラアサナ(半車輪のポーズ)と呼ばれることもあります。

「曲げる」より、「伸ばす」

誤解されがちですが、このアサナで最も大切なことは「曲げる」ことではなく、「伸ばす」ことです。

「ハスタ・ウッタンアサナ」の名前自体にも「曲げる」意味はありませんし、そもそも、太陽礼拝中にこのアサナで「曲げる」に意識を置くと、怪我をしやすくなります。

このアサナで後方へ伸びる時、頭部にかかる重力の向きは足裏から外れて 体の後方にきます。
安定性を欠いたこの位置で、重たい頭部を体は支えなければなりません。

これを太陽礼拝の流れの中で行うとき、動きと動きの間で常に後方へ「曲げ」ようとすると(特に早いリズムの太陽礼拝では)遠心力がかかって、 さらに頭部を支える負担が増大します。

その中でも負担が大きくなる部分は、アーチが強くなる腰部です。

このアサナの目的であり 安全に行うために、
「曲げる」意識ではなく、「伸ばす」意識で練習しましょう。

後方へ伸展するのは、伸ばした結果の延長に起きること。

早い太陽礼拝では 一つのアサナにかけられる時間が減る分、自然と後方への伸展は小さくなるでしょう。


このポーズも 前回に引き続きとてもシンプルなポーズですが、意外に体が整っていないと「似たような別の運動」になりやすいアサナです。

何を意識するか、使いたい部分はどこか、自分の目標を見誤ると「安全に体を変える」ことから遠のくので、一つづつ確認していきましょう。

「伸ばす」動きを 行うポーズ

体を「伸ばし」ながら、重たい頭部を最も負担が少ない形で支えるのが 基本の目標です。

そのためには「体の特定の部分」で支えるのではなく、「全身に分散させて」支える必要があります。

①まずどの人においても、基本は脊柱を伸ばすことです。

体をそらせることを一旦脇に置いて、体を重力と反する方向へ垂直に伸ばす意識でやってみましょう。

動きはタダアサナ(この場合、椰子の木のポーズを指す)と近いイメージで、腕を伸ばし、腕が伸びていく力のまま、脊柱の間も伸ばしていきます。

特に、「肋骨と骨盤の間を伸ばす」ーどちらかというと離していく感覚で行います。

肋骨と骨盤の間が伸ばされることによって、この体幹部の安定性も増します。

動きの中で行われるアサナですが、ストレッチが最大になる時には、合掌を解いて 腕は肩幅程度に開かれています。

これが気持ちよくできるようになったら、ここから、

②骨盤を前方に向かって少しずつ押し出しましょう。

骨盤を前方へ押し出すと、バランスを取ろうとする体の反応で、体が弧の字になります。

結果的に体がアーチ状に見えることになりますが、「曲げ」ているわけではありません。

アーチになっても、体の内側の「伸びる」感覚を無くさないように。

この「伸び」がアーチを支える力でもあります。
アーチが深くなる程、お腹の内側や鼠蹊部の伸びが強く感じられます。

〈 ポーズを深めるポイント〉
「伸ばす」ことを「途切れさせない」

これにプラスして大切なことが「途切れさせないこと」。

体の一部分が「抜ける感覚」「楽している」または、「固める感覚」「支えようと力む感覚」があるとしたら、もし、アーチ状に見えていたとしても、体の中では やりたいことと違う使い方をしています。

「伸ばす」ことを「途切れさせないで」行う。

どんな時も「一体感」があるアサナが理想的です。

後方へ伸びていく中で「途切れる感覚」に気づいた場合は、伸ばす方向を、後方から垂直方向に戻して、伸びが感じられる場所でキープしましょう。

途切れてしまうとどういうことが起こるのか、以下に続けて見ていきます。

【 一体感のないアサナの例 】
(体の特定部分を使ってしまう例)

このアサナをやっている時に全身が使えない、一体感のないアサナになる時は、体のある一部分で支えたり、力を逃し始めています。

こうなると負担が特定の部分にかかりやすくなり、繰り返すことで怪我につながります。

体の特定の部分を使ってしまう、よくある例をみてみましょう。

❶ 膝を曲げてしまう

比較的よく見かける例です。

ご覧のように、膝を支点に、足裏から膝、膝から指先までと 力の流れは2つに分断され、体全身でのアーチにはなっていません。

股関節が使えない状態で深く曲げようとするとアーチを深められないので、無意識的に膝で動きを補ってしまうのではないかと思われます。

この場合 全身で分散させたかった力は、支点になる膝に向かってかかることになります。

そのために、太腿前面にあるアウターマッスル、大腿四頭筋を過剰に使うことになります。

ここを使うことが習慣化すると、太腿の前面が肥大し、太腿の前が太っているような、大きく見える脚になります。
さらに、膝に直接付着している力の強い筋肉のため、膝への負担が大きくなり、将来的に膝を痛めることにつながります。

❷ 腰をそらせてしまう

重たい頭部を全身で支えるのはある程度力が必要ですが、ある部分を「抜く」と急に楽に感じます。

それは「腰」です。

腰をそらせてお尻を後方へ突き出すと、頭部の重力が抜ける線が自分の体に近くなり、「頭部の重み」という負担は軽減します。

この形、アーチとは程遠く見えますが、腰はそっているので、やっている本人は「アーチが作れている感覚」が得られます。


そしてこの形は、体幹も股関節も使えなくてもできるので ある意味「楽ちん」です。

では「それで解決か」というと、上半身の重さ アーチを保つ負担は、ほとんど全て腰上部周辺にかかることになります。

腰上方で支えることを繰り返したり癖づけることは、脊柱起立筋や腰方形筋の負担が強くなり腰痛を起こしやすい体の使い方になります。

さらに、腰椎の湾曲を強くして、腰椎間を圧縮させるような使い方になっているので、将来的な椎間板ヘルニアのリスクを高めます。

「腰を抜く」ような、体の一部分で全ての動きの負担を補うような使い方が「楽さ」として感じられることもあるかもしれませんが、「感覚的楽さ」が「身体上の安全性」を成立させているわけではないことを知っていていただきたいです。

体の一部分でやってしまう原因

❶も❷も、体がそうなっていることを指摘すると、少なからずその方は驚かれることが多いです。
そのため、ご本人は、「全身がアーチになっているつもり」でやってしまっているのだと思います。

やるつもりがなくてもそうなってしまう理由には 次のことが考えられます。

・「伸ばす」意識より、「曲げる」意識でやっている
・体幹、股関節が使えていない、使える体になっていない

これを回避するためには、「伸びる意識」と、その伸びを途切れさせないために過剰に後方へそらせずに「今の体ができる位置で止まること」を意識するだけで、❶や❷のような体の使い方はかなり改善すると思います。

このアサナの最終形

どのレベルの人も、まずは「気持ちよく伸ばせる」ことを大事にしてください。

そして、このアサナが深まってきた人は…
アーチが深くなっていても「気持ちよく伸ばせること」が最終形です。

はい、同じことを言っていますよね。
何度言ったかわかりませんが、初心者でも最終形でも「気持ちよく伸ばせること」なんです。

このアサナを深めることは、「アーチをできるだけ深くすること」ではなく、「気持ちよく伸ばせること」です。

アーチが取れている人はたくさんいますし、もっとアーチを深めたい方もいると思いますが、「アーチを深くすること」をゴールにしないでください。

例え外見上はアーチ状で膝や腰に変なところがなかったとしても、「アーチを深める」ことを重視すると、前述したように体の一部分を使ってしまうような使い方に傾きます。

あなたのポーズの中に、「腰が抜ける」「膝で堪える」感覚はありませんか?

もしそれがあれば ー床についた足裏から指先まで伸びる感覚がなければ、程度の差はあるとしても 体の一部分を使っている状態が起きています。

「全身がつながっている感覚」がある位置で体をキープしましょう。

急がなくても、このポーズの維持に必要な体幹・股関節は、練習とともに使えるようになってくると思います。

このポーズはそうして体が整えば、「頑張る」感覚なしに、気持ちよく後方へ伸びる感覚が生まれます。

これが最終形とも言えます。


ポーズの中にある「一体感」

「ポーズに一体感がある」「床とつながっている」

こうした感覚は、どのポーズにおいても必要で とても大切な要素ですが、このポーズでは 特に顕著です。

できればヨガを通して、「一体感のない使い方」 
ー 「スカスカする」ような体の使い方に 違和感を感じ取れるようになっていただけたら…というのが私の願いです。

ここで扱う太陽礼拝は、ビハール・スクール・オブ・ヨガ(BSY)をベースとしたものです。

シヴァナンダ・ヨガやSVYASA大学の太陽礼拝とスタイルは近いですが、
流派によってポーズが異なっており、重視するポイントも違います。
あくまで、このスタイルにおける注意点とご理解ください。