Yosemite −ハーフドーム・トレイル−
前回に続き、ヨセミテ旅行の個別情報です。
Covid−19下でのヨセミテ滞在については こちら
気温差による滞在経験の違いについては こちら
※ 全ての情報は2021年6月時のものです。
【ハーフドーム・トレイル】
基本情報
往復22.4km、標高差1463m。
所要時間:10〜13時間
「地球の歩き方」アメリカ国立公園版には、「本書で最もハードなトレイル」という表記が認められるこのトレイル。
ハーフドーム・トレイルは、以下を往復する経路になります。
- ヴァーナル滝・ネバダ滝(ミスト・トレイル)【黄・紫】 or ジョン・ミュア・トレイル【黄・緑】
- リトル・ヨセミテ・バレー(ジョン・ミュア・トレイル)【赤】
- 林間部、サブドーム、ハーフドーム(ハーフドーム・トレイル)【オレンジ・水色】
(上の表の【 】内の色は、下図のラインを引いたルートを示す)
実際の経路、時刻、かかった時間など
アッパーヨセミテ・トレイルの経験から「やれると思うが自分たちのペースだと時間がかかる」と見込んで 早めに出発し、上りの経路に休憩を度々挟みつつ、11時間半で戻ってきました。
この日は最低気温18℃/最高気温32℃で、これがいちばんの課題でした。
とにかくできる限り暑さ避けることを考え 早朝にスタートしています。
予定では、帰りはジョン・ミュア・トレイルから、途中クラーク・ポイントでミスト・トレイル方面へ入り、ヴァーナル滝からミスト・トレイルに入るつもりでした。
暑さの中、滝に濡れるのが気持ちいいだろうと思ってのことでした。
けれど雷雲が発生したので、落雷を警戒して 滝に濡れない経路、レンジャーが強く勧めてきた経路で戻っています。
歩いた区間 | 時 刻 | かかった時間 |
トレイルヘッド 〜 ネバダ滝まで(休憩) | 4:50-7:00 | 2:10 |
ネバダ滝 〜 リトル・ヨセミテ・バレー 〜 林間 〜 サブドームまで | 7:00-10:00 | 3:00 |
ハーフドーム(ケーブル) | 10:00-11:00 | 1:00 |
(休憩・写真撮影など) | 0:30 | |
ハーフドーム 〜 サブドームまで | 11:30-12:30 | 1:00 |
サブドーム下(ランチ)〜 林間部 〜リトルヨセミテ バレー 〜 ネバダ滝まで | 12:30-14:30 | 2:00 |
ネバダ滝 〜 ジョン・ミュア・トレイル 〜 トレイルヘッド | 14:30-16:20 | 2:00 |
トレイルの印象
アップダウンの激しい、長いトレイルという印象です。
ヴァーナル滝・ネバダ滝のトレイルが険しく、同様にサブドームも急斜面を登ることになり、ここは高度が高いこともあってかなり息切れし、時間がかかりました。
同じ上りでも、リトル・ヨセミテ・バレー、山間部は穏やかな登り坂なので、ここでサクサク歩いて時間を稼ぎたいところです。
思ったよりもケーブルは大変ではありませんが、上りの時は 私たちの前を登っていた人が体力的に厳しかったようで、なかなか進まず、ずいぶん時間がかかりました。
ケーブルは自分のペースで上り下りできないので、ケーブルが混みあえば その分時間がかかると思っておいたほうがいいと思います。
許可証について
ハーフドームを登るには許可証が必要です。
(許可証の申し込みの詳細情報については公式サイトをご確認ください → 公式サイト )
今回 ヨセミテ旅行自体が急に決まったので、許可証もシーズン前の抽選はもちろん間に合わず、2日前の抽選に申し込んで獲得しました。
抽選申し込み料:$10 許可証の料金:$10/人
※ 抽選に外れたりキャンセルしたとしても、申し込み料$10は徴収されます
(2021年6月現在)
今回 2日連続で申し込みをし、初日の申し込みは落選しました。
翌日の抽選で当選したのですが、当選率は平日でも9.5%という競争率なので、当選したこと自体に驚きました。
結果は、毎回申し込んだその日の午後17時くらいに メールで届きました。
キャンセルする場合は、予定日前日21時までにキャンセルの連絡を入れれば、許可証の料金は返金されるようです。
許可証についての注意
当選のメールには 身分証明書(ドライバーライセンス等)原本を持つようにという表記もあるようですが、今回は提示は求められず、必須ではなさそうで、当選の連絡があったメールを提示するので十分なようです(と言いつつ、担当者によって異なるかもしれないですが)。
可能であれば身分証明書やメールなどのスクリーンショットを撮っておく、または印刷をしておくと安心です。
とはいえ、既にヨセミテ内で抽選に参加した場合印刷は簡単ではないので、スクリーンショットを撮って他の参加メンバーへ転送しておくなど情報共有しておくといいと思います。
というのも、今回ハーフドーム下山途中に 当選のメール等の情報が入った夫の携帯が壊れ 完全に使えなくなりました。
許可証を見せた後だったからよかったものの、手前で携帯が死んでいたら 許可証の証明ができない状態になったわけで、ハーフドームを目前に下山させられていたかもしれないからです。
重要な情報は二重三重に情報が確認できる状況にしておいた方が、何かあった時に安心です。
【 早朝のスタートが薦められる理由 】
・ 太陽が出ている間にできるだけハイクを終わらせるため
健脚で、登りでもそれほど休憩を必要としないような方でも10時間くらい、場合によって13時間以上かかるかもしれないトレイルなので、とにかく時間がかかります。
ハイキング中に太陽が沈んてしまったら、足元が暗くなることで トレイルを誤って離れてしまったり、段差に気づかず怪我をするなど、トラブルにつながります。
日照時間が最大になる夏至(例年6月21日付近)でも 日の出から日の入りまでの日照時間は15時間未満なので、ここから前後すればするほど 日照時間はどんどん短くなります。
まずこの点で、できるだけ早くハイクを始めることが勧められていると思われます。
・ 暑さを避けるため
夏場はそれに加えて、熱中症の危険もあります。
ハーフドーム・トレイルはアップダウンが激しく運動負荷が強いので、ハイクの間 体温がかなり上がります。
それを高気温の中で行うことになるので、運動によって体内に生まれた熱と日射による外部からの熱で、熱中症の危険が高まります。
予想気温のグラフを見れば一目瞭然ですが、11時〜18時間の間は、最高気温とほぼ変わらない気温が続きます。
(気温についてはこちらに書いたものもご参考ください)
一方で 夏でも18時以降は数時間のうちに太陽が沈んでしまうので、少しでも気温がマシ、かつ 太陽光があるうちに歩くなら、11時より前にできるだけ歩いて距離を稼いでおくことが必要になります。
とにかく夏場は、10時間以上の経路の中で できる限り暑さを避けるために、暗いうちにトレイルヘッドへ到着するのをお勧めします。
幸いハーフドームの上は標高が高いので、バレーよりも5〜8℃ほど気温が低いです。
うまくいけば、下りのコースに入るまではそれほど暑さを感じないでも済むかもしれません。
暑さとは直接関係はありませんが、紫外線対策も必要だと思います。
標高も高く その分紫外線は強いので 日焼け止めはもちろんのこと、帽子やサングラス、ハイキング・グローブなどで肌を覆っておくといいと思います。
今回挑戦した日の気温も18℃/32℃と、6月としてはかなり暑い日にハイクをすることになりました。
私たちは3時半過ぎに起床し、4:20にハウスキーピング・キャンプを出発。
ヨセミテ ・ヴァレー・トレイルヘッド・パーキングに駐車し、4:50にミスト・トレイルヘッドへ到着しました。
本音を言えば、もう30分早く到着していたかったです。
パーキングでは真っ暗でしたが(ヘッドランプ使用)、トレイルヘッドでは既に空が白みつつありました。
ヴァーナル滝上(7時前)まではずっと直射日光なしでハイクすることができ、暑さを感じずく、水分補給をほとんどせずに済みました。
・ 雨と落雷を避けるため
早朝にスタートを勧められる理由が、もう一点あります。
雨と落雷を避けるためです。
ヨセミテバレーは、気温が高い日の午後は雷雲がよく発生します。
雷雲は夏季の午後によく発生するようですが、どの季節でも天気予報をよくチェックして 本当に今回トライするかどうか検討することが必要だと思います。
この点については、地球の歩き方でも、レンジャーによる動画内でも指摘されています。
動画では、7月の午前中に急な雷雨を経験し、軽い感電を起こしたレンジャーの体験が話されるシーンもあります。
「上空に雲があれば、ハイクを続けるのは危険かも。引き返す必要があるかも。」
「軽い雨でも危険」
「雨で濡れると 岩肌はとても滑りやすくなり、ケーブル自体も握りにくくなる」
「ハーフドームの危険性と、山の天気の危険性を実感した」
「怪我と死亡事故の多くは、雨に濡れた岩肌で滑ったことが原因」
ヨセミテ公園内の岩場は、滑りやすい岩肌が多いと感じます。
サブドームやハーフドームは比較的滑りにくい岩肌に感じますが、濡れると滑りやすくなることについては、動画内でレンジャーも指摘しています。
「怪我と死亡事故の多くは、滑落が原因」ということなので、滑落のリスクを減らすには 晴れている間にドームを下りておく必要がありますが、(今回もそうだったのですが)天気予報は晴れでも、午後は急に雷雲が発生することがあります。
また、落雷が起きた時 安全と言えるのは屋内や車の中くらいのものなので、山中はどこも安全とは言えません。
(気象庁「雷から身を守るには」を参照)
ましてや、ハーフドームの頂上付近は、ひらけた何もないところにケーブルという避雷針代わりのようなものがあるので、雷が落ちやすく、落雷があればそのまま感電する恐れもあり とても危険です。
「雷が聞こえてきたら、とにかくケーブルからできるだけ離れる」ことが勧められているようですが、ケーブルを上り下りしている最中なら、体力的にも上下にいるハイカーの状況からも「数分以内に上か下に到達する」 ということ自体が不可能です。
雷雲が発生しやすい午後より前に、ハーフドームの登頂を済ませておきたいところです。
ハーフドームだけでなく、ミストトレイルも水に濡れるトレイルであり、ここにも鉄柵を掴んで登る場所があるので 近くで落雷があれば感電のリスクが高くなります。
先ほど言ったように、落雷では車内や建物内以外は安全ではないので、ドーム周辺だけでなく ハイキング中のリスクを減らすためにも、できるだけ午後のハイキング時間が長くならない方が安全だと思われます。
6月に入ったばかりでしたが、今回 15時くらいに雷雲が発生しました。
雷の音を聞いた時、私たちは既にジョン・ミュア・トレイルに入っていましたが、ハーフドームの後方にグレーの重たい雲が見えました。(下写真)
先を歩いていた ハーフドームを下ってきたレンジャーは、私たちを含め周囲のハイカーに「早く下山するように」言っていましたし、彼女がハーフドーム・トレイルの道中で出会った登りのハイカーには、全て「引き返せ」と話していたようです。
しかし、彼女より後に下山していたはずの私たちは、多くの上りのハイカーとすれ違いました…
中には、14時前に ネバダ滝を過ぎてすぐあたりですれ違った人もいました(更に、そういう人に限って超軽装)。
3/4位以上の距離がこれからあるのに、登頂するつもりか、何時に帰るつもりでいるか、雷をどうするか…
全て自己責任とはいえ、色々心配になってしまいました。
・ 早朝のハイキング自体がいい
実際に歩いてみて、暗闇からほんのり空が白んでくる中、鳥のさえずりと水音を聞きながら歩くハイクは、清涼感があり清々しいです。
もちろん人もほとんどいませんから、静謐な空間を歩くことができます。
ミスト・トレイルとしても、あるいは その他のトレイルでも、早朝のハイクにはとても魅力があると思います。
【 持っていると良いもの 】
ヘッドランプ
既に紹介したレンジャーの動画内でも、予備の電池と共に「人数分持つべき」と言われている道具。
早朝にスタートした場合も、もし明るいうちに下山できなかった場合も、暗い足元を照らす道具として必要です。
クイックドロー
これは経験者の方のブログを拝見して存在を知りました。
最後のケーブルで恐怖感で進めなくなる方、引き返す方もいるようで、この不安感を軽減するのに役立つとありました。
私はロック・クライミングをしないし、これっきりならもったいないなと思ったけれど、結局 これのおかげで不安なく、景色を楽しみながらケーブルを登ることができました。
特に、下りの中で起きたあるシチュエーションで、一番威力を発揮したと思います。
ケーブルには木の足場があるのですが、足場がいい間隔にない場所もあり、今回の場面は「次の木の足場まで距離があり その上、人が停止するには滑って不安定な岩場」でのことでした。
上ってきていたハイカーが動けなくなり、下りの私も もう足場を離れていて自分の後ろに人がいて戻れず、ここですれ違わなければならないという場面でした。
ケーブルは2本ありますが、上りと下りの人がいると、それぞれ片側のケーブルを使ってすれ違うことがほとんどです。
けれどこの時、相手は安定を感じられなかったらしく、どちら側のケーブルも開けてもらえず、一瞬も手を離すことができないと言われ、私自身は その場の岩場が滑って足が安定しないので、下に落ちていかないよう 今握っているケーブルを手で握ってしがみついていなければいけないという状況にありました。
しがみつづけても手の限界が来るので、結局、私がケーブルの外側に出て、その人をケーブルの外側から避けて下の足場まで行くことになったんですが、滑る足場で握り続けることも、ケーブルの外に出ることができたのも、クイックドローがあったからだと思います。
安心感があると、冷静に体を動かせるので 心配な方はあるといいと思います。
私は16cmの物を購入したのですが、もう少し長い方が使いやすいとは思います。
(ただ、これ以上長いものを限られた時間で探せませんでした)
軍手など滑り止めのある厚手の手袋
ケーブルを登るときに使います。
皮手袋が推奨されていますがそんないいものでなくても、100均にあるような 厚みのある、滑り止めのついた軍手で十分かと思います。
ケーブルの前には 過去のハイカーが残してくれているものもあるかもしれませんが(今回はたくさんありました)、用意しておく方が確かです。
トレッキングポール
これも今回購入しましたが、これがあったから、アップダウンの激しいアッパーヨセミテやハーフドームのトレイルが ずいぶん歩きやすくなったと思います。
アップダウンの激しいコース、距離の長いハイクの時は、あると体への負担が軽減されると思います。
十分な水
言わずもがな。
最初のお手洗い以降(マップ参照) 水を補給ができる場所がないので、最初から全行程に足りる水を自分で担いでいく必要があります。(浄水フィルターがある場合は別ですが)
激しい運動で体温は高くなっていますし、乾燥した地域でも汗もかなりかきます。
水が足りなくなれば、(気温が高ければ高いほど)即脱水で熱中症が急速に進みます。
今回私たちは、一人3リットルを持ちました。
早朝出発だったので、ネバダ滝までは涼しく 水分補給をほとんどせずに済みました。
そのせいか、全部飲み切らずに下山ができました。
とはいえ、サブドームを降りた時から暑くなり、ここから水の減るスピードが一気に加速しました。
その都度その都度水分補給をまめに行う必要があったので、スタート時間が遅くなればその分、水分を消費することになると思います。
トレイルミックスやパックゼリーなどの軽食
とにかく長くて、体力を消耗します。
朝も早く食事の準備自体も大変なので、手がかからず傷みにくい 栄養価の高い軽食があるといいと思います。
私たちの場合は、朝食は取らず、バナナやみかんなど フルーツを持参して、ミスト・トレイルで休憩する度に少しずつ食べました。
あとは、山頂でエナジーバーを食べたり。
昼食は、冷凍していたおにぎりをそのままリュックに詰めていきました。
パック入りの吸って飲むタイプのゼリーも持って行きました。
水分補給も兼ねられますし、これは不思議と(といいつつ糖質のせいだと思いますが)、ハイク中に食べるとすごく美味しく感じます。
蚊除け
前回ヨセミテに来た時はほとんど見なかったのですが、今回は暑かったせいか 蚊が発生していました。
バレー内はそれほど多くなかったのですが、リトル・ヨセミテ・バレーからサブドームまで(マップの赤〜オレンジ区間)、この区間に とても、大変 蚊が多く、これにとても苦しめられました。
今回ほかのハイカーたちも、蚊に苦しめられたと口々に言っていました。
私たちは、高音域の機械音が出るタイプの蚊除けと、体に優しいハーブ系のスプレーを用意していたのですが、どちらもあんまり効かないです😅
よく効く蚊除けスプレーを持っているといいと思います。