〇〇はどこにある? −坐骨 編−
「坐骨をマットにつけて」
私のクラスでは度々出てくる言葉です。
瞑想のポーズで座る時、長座で座る時、捻るポーズに入る前など…
毎回「坐骨をマットにつけて」「坐骨を浮かせないで」と話しています。
ところで、「坐骨」はどれのことか。
マットに座骨が当たっている感覚はどんなものか。
皆さんははっきり認識できているでしょうか?
最近SNSで「座骨がどこかわからない」的な投稿を見かけ、わからない場合があることに気づきました。
「『坐骨』なんてわからなくても、見ていたら体は動かせる」
確かに。
聞き流して なんとなく体を動かすことはできます。
ただ、「形だけ」を追うことは 本当に使いたい部分を疎かにしてしまうこともままあります。
正確な部位を知り 感じられることで、より細かく体の動きや仕組みを知ることができます。
存在を知る。そして、その感覚をつかむこと。
体はその存在を知って意識しだすと、その部分が感じていることを拾えるようになります。
歩くこと。走ること。踊ること。
サッカーやテニスで道具を使ってスポーツすること。
どれもうまく動くためには、体をコントロールし、思い通りに使える必要があります。
存在を認識しないもの、感じられないものは コントロールできない。
感じて初めて、コントロールができるようになります。
その部位を確かめ、感覚をつかむこと。
とても地味で、微細で、パッとしないことですが、体を知ることが 安全な動き、美しい動き、無駄のない効果的な動きの、土台になります。
今回は 坐骨が体のどこにあるか、どんな感覚があるか、
触って感じて、自分で確かめられるようにまとめました。
正直、部位の名前は 知っていてもいなくてもどうでもいいです。
ただ、部位の名前を出さないと、どの部分を指しているか説明と確認ができなくなるので、便宜上出しています。
探せて 感じられれば十分です。
クラスの説明で言われた時に、その部分がどこかわかるようにしたいなら 覚えておくと便利です。
坐骨の場所と感覚をたしかめる
解剖ではイラストの水色部分が坐骨です。
股関節の一部で左右にあり、内臓を支えている骨盤底筋膜や、股関節の動きに関係する筋肉、ハムストリングの一部など 下肢につながるインナーマッスルが付着しています。
坐骨は大きくて触れやすい骨ですが、立った状態では探しにくいので、座って探していきましょう。
「坐骨」で検索すると、「坐骨神経痛」の方がたくさん出てきますね。
坐骨神経痛は「坐骨の神経痛」ではなく、「坐骨神経の痛み」のこと。
図のように全くの別物です。
【 坐骨に触れる 】
イスを使います。
座面が硬めのイスを選んでください。
イスの前で立って、お尻と太腿の境目に手のひらを当てます。そこからイスに座りましょう。
座って、手がお尻とイスに挟まれた時、お尻の中にある硬いものに触れます。(人によって多少位置はズレますが、近くにあると思います)
それが「坐骨」です。
左右どちらのお尻にもあるので、両方に触れて確かめましょう。
【 感覚を確かめる 】
座骨の位置がわかれば、ここから感覚を確かめます。
1 . 左右の感覚
❶ 大きく体を左右に動かします。
片側のお尻が浮くくらい大きく動いて、お尻が着いている方の坐骨の感覚をしっかり確かめます。
❷ 動きを小さくしましょう。
頭を右、左とゆっくり動かし、重心を左右に移動させます。
左右の坐骨は両方着いているけれど、右に頭を持っていくと、右の坐骨に体重が強くかかり、左に頭を持っていくと、左の坐骨に強く体重がかかるのがわかります。
❸ 左右どちらかに偏ることなく、両方に均等に体重がかかる場所を探します。
「左右の坐骨に均等に体重がかかる」
ーつまり、頭部が左右の坐骨の間の延長線上にある状態。
バランスの取れている体であれば、背骨は垂直になるでしょう。
ーが。
ご覧のように、私は少し左側に傾いています。
感覚的に均等に乗っているつもりでも、
片側に荷物を持つ習慣、片側を優位に使うスポーツをしている(テニス、バレー、野球、サッカー、バスケなど、ほとんどのスポーツは片側を優位に使う)など…
体の癖や 体の使い方による筋肉のアンバランスによって 背骨が傾いたり垂直にならない場合があります。
私の場合、わずかであっても 左側に傾いている。
自分の認識と現実との間に、その分だけ 差があることになります。
片側に荷物を持つことが多いので、そのあたり改善できることがあるかもしれません。
自分の「左右均等に坐骨に乗った」感覚で、実際は頭部と背骨が垂直かどうか確かめましょう。
理想的な垂直か?
あるいは、そこからどのように離れているか。
感覚と現実の差から、自分の中のアンバランスを 確かめてみましょう。
2. 前後の感覚
今度は骨盤を前後にゆっくり倒します。
後方に倒すと 座骨にかかる重さが軽くなります。
前方に倒すと それとは違う感覚で坐骨にかかる重さが軽くなります。
一番坐骨に体重がかかる場所がどの位置か、タダアサナで骨盤を揺らすときのように前後に動かして 探してみてください。
後方に骨盤を傾ける 前方に骨盤を傾ける
一番坐骨に体重がかかる場所が見つかったでしょうか。
それは、体の軸(もっとも重い頭部が通る垂直線)が坐骨を通っている場所になります。
アウターマッスルに柔軟性があり、インナーマッスルが使えていれば、もっとも無駄な労力なく、体を支えられるポジションになります。
自分にとってのその角度が見つかったら、この位置をしばらくキープしようとしてみてください。
キープが長くなると、後部へ引っ張られる、腰や腹部に力が入るなど、体のどこかで努力が起きていないか 観察します。
今もし、なんらかの努力が必要だったとしても、今後ヨガの練習を通して、アウターマッスルの柔軟性が身につき、インナーマッスルが働くようになって体が整ってくると、どの部分も緊張させることなく その位置がキープできるようになります。
長座のとき
これと同じことを、長座(ダンダアサナ)でも確認してみましょう。
脚を前方に伸ばすと、体の背面の柔軟性がイスに座っていた時よりも必要になります。
椅子の時よりも、体重がもっともかかる場所が探しにくく、また、その位置で座り続けるのが難しいかもしれません。
後方に引っ張られる。
あるいは、腰を前傾させて支えたい気持ちになるかもしれません。
短いハムストリングに引っ張られて
骨盤が後傾骨盤を前傾させて腰上部で支える
長座でも、イスの時と同様、
アウターマッスルに緊張がなく 努力なしで坐骨にもっとも体重がかかる場所で座れるようになるのが理想です。
左右・前後で もっとも坐骨に乗る時
・「左右の坐骨に均等に体重がのる位置」
・「前後に動かしてみて一番体重がかかる位置」
→この状態の時、頭部はもっとも安定して支えられる
そのため、この状態での座った姿勢は
・身体的負担がもっとも少ない
・バランスが取れているため美しい
と個人的に感じます。
クラスでいう「坐骨が座面(床)についている」状態はどれ?
クラスで「坐骨をマットにつけて」「坐骨を浮かせないで」と言っている時は、まずは「左右の坐骨に均等に体重をかけること」を目指します。
それが難しい時は「左右どちらかに強く乗るけれど、両方の坐骨が着いている」ようにしておきます。
「坐骨をマットにつけて」
・左右の坐骨に均等に体重がかかっている(バランスが取れているとき)
・左右の坐骨どちらかが優位になる
坐骨の片側だけが着いている状態は?
坐位のアサナ(側方へ屈曲伸展するものを除く)では、片側の坐骨が浮いている方が望ましいというポーズはないように思います。
そうなると背骨が真っ直ぐにならず、使う筋肉のバランスも悪くなるからです。
これは繰り返し継続すると、癖となり 体の歪みにつながります。
坐骨の片側が浮いてしまうと背骨や骨盤の歪みを引き起こし、体の使い方に悪い癖として定着しやすいので、ポーズの中で坐骨の位置確認を意識的に行ってください。
見た目の完成より、坐骨をつける方を優先的に 練習をしていきましょう。