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土と、発酵と、再生と。

ここ最近、「発酵」に夢中です。

「ヨガブログで何の話?」
という感じだと思いますが、具体的にいうと 今現在は「コンポスト」です。

きっかけは家庭菜園の土の再生方法について調べたことからなんですが、
皆さんは 「良い土は発酵している」ってご存知でしたか?

私は土の再生に発酵が必要だったなんて 全く知りませんでした。

きっかけは この写真。

「土が発酵している」
「土って、…発酵するものなのか」

「土が発酵する」事実そのものに、衝撃を受けました。

「有機物が微生物によって分解されること」は学生時代勉強して理解していると思っていたけれど、「それは“発酵“でもある」と自覚できていないかったことを、この記事の内容を読んで思い知りました。

身近な細菌を味方につけて、条件を整えることで、土を再生させる。

もう一度、食物を育てられる土の状態へと変化させる。

それは、

食材を手に入れること。
調理すること。
食べること。
廃棄すること。

食物を摂取する一連の流れが これまで自分の生活上一方通行だったのが、
「廃棄→食材を生む」が、再び繋がっていくこと。
捨てる行為だったものが、食材を生む行為につながっていくこと。

廃棄するしかなかったものが、生産する力になること。

それを、微生物たち ー他者の力を借りることによって行うこと。
それは、コントロールでもなく、受動でもない、
彼らは自由にしているけれど「その環境・バランスは整える」という 私たちの能動的な関わりが必須となること。

「発酵」も「腐敗」も 勝手な「人間の捉え方次第」ですが、
腐敗も発酵もできる状態のところから、発酵が進みやすい状態を準備し、整えていくこと。


観察して、読み取り、その都度 バランスを調整すること。

待つこと、見守ること。
結果を、受け入れること。

何とも、ヨガと似ているように思います。

一旦 この再生のサイクルに関わる感覚を感じてしまったら、
そして、「自分は主体ではないけれど 明らかに自分が関与することによって成立するサイクルであること」を知ってしまったら。

それは自分の世界との関わり方が変わる、とても可能性のあることに思われて。

生活の中の「発酵」可能なものを 色々始めています。


日本は発酵天国なので、情報も材料も条件も よくそろっていると思いますが、ベイエリアでは同じようにはいかないものです。

何かの参考になればと、参考にした情報と 今現在取り組み中の具体例を以下にまとめます。

【 ダンボールコンポスト・
高倉式コンポスト 】

一度植物を育てた土は、害虫の卵などの殺菌処理をしても、pHや栄養バランス、土の保水性の乱れなどから そのまま利用すると植物がうまく育たなくなります(連作を好まない作物もあります)。

これは肥料を足すだけでは改善できない問題のようです。

植物の育成に適した土壌の中には、発酵菌(納豆菌、乳酸菌など)、放線菌、担子菌がおり、これを整えることでも再生が可能とも言えます。
有用な菌が優勢になるように状況を整える方法ーつまりこれが「土を発酵させる」ということになります。

土を発酵させる再生方法に惹かれ、調べる中で

①「古い土に混ぜ物をして土を発酵させる方法」 と
②「コンポストで発酵堆肥を作って古い土に混ぜ込む方法」

の二つに興味が湧きました。

① 古い土に混ぜ物をして発酵させる方法

参考になったのはこの方のブログ。

冒頭の土が発酵している写真も この方のブログで出会いました。
この記事では、土壌内の細菌増殖(発酵)を助けるために 砂糖水や米ぬか、ヨーグルトを薄めた水を使っています。

自然の原理を上手に生かしているこの方法はとても魅力的でトライすることを考えたのですが、混ぜる基材に米ぬか、腐葉土が必要で「土5:腐葉土3:米ぬか2」の比率では、米ぬかの量が 相当必要になります。

アメリカ在住の方にはすぐにご理解いただけると思うのですが、ここでは米ぬかはそう簡単には手に入らない…
一応ニジヤなどでも入手可能ですが、そうなると とても高価です。
(ちなみに、いわゆる“腐葉土“も入手が難しいです)

手に入りにく基材の代用品、あるいは、もう少し都合のつく基材で何とかならないか…

そう思いながら検索を続ける中で次に興味が湧いたのは、「コンポスト」です。

② コンポストで発酵堆肥を作って古い土に混ぜ込む方法

コンポストも 庭の一角に置くもの、電気式のものなどいろいろありますが、自宅には まずそういう庭がないし、失敗することもあるし、飽きる可能性もあって 初期費用は抑えたい。

そこでダンボールコンポストに目をつけました。

❶ ダンボールコンポスト

ダンボールコンポストは「失敗が少ない、早い、簡単」と体験者の口コミもよく、うまくいけば家の中でもできるくらい臭いもないらしいです。

検索すればたくさん出てきますが一例として
西宮市:ダンボールで生ごみを堆肥化リサイクル!

ただ、基材を調べていると大体「ピートモス」に加えて「籾殻くん炭」が出てきます。

「成功のためには基材が重要」「失敗の多くは資材がよくない」ということで、この二つを確保したいところですが、アメリカでは 籾殻くん炭は 無理でしょう…

どうしようかな…と思う中で次にヒットしたのが「高倉式コンポスト」です。

❷ 高倉式コンポスト

高倉式コンポストはJICAが力を入れている方法らしく、環境が異なる場所でもコンポストの原理を生かし失敗が少ない方法として活用されているようです。
(詳細は次のリンクが参考になります)

何より興味が湧いたのは、この原理を世界中で試していること。

高倉式コンポストは、ダンボールコンポストと原理自体は違いませんが、特徴があります。

・ 世界中で、その土地にあるものを 基材として活用している
・ 基材の短所を補い、発酵を助けるために「発酵液」を事前に作成する

「米ぬか」「籾殻、および籾殻らくん炭」は世界中にある基材の中でも極めて優秀なようですが、日本以外では入手が難しいもの。

その点、この高倉式コンポストでは、「その土地にあるものを使って、できるだけ失敗が少ないような方法をとる」というのが今の私の現状に合っているように思い、今回はこの方法にトライすることにしました。

我が家では家庭用精米機があるので、米ぬかは少量なら手に入ります。
これに、庭から集めた落ち葉などを加えました。

【 我が家の例 】
〈発酵液〉砂糖水 + ヨーグルト、味噌、塩麹、きのこ(椎茸、キクラゲ) → 3日ほど常温放置
〈基 材〉米ぬか + 落ち葉(その下にあった少量の腐葉土含む)、コーヒーかす (1:2くらいの割合)

上記を、ダンボールコンポストの基本を参考に ダンボールを使ってトライ。

基材に寝かせた発酵液を混ぜて それらしくなるまで7日。
臭いは混ぜた当日はフルーティーな香りで、最終的に納豆や麹っぽい匂いに変わり、これ以上待っても変化がなさそうなので、7日目から生ゴミを投入。

生ゴミを追加し始めて、現在 5日目です。

世界各国で実践中のQ&Aは、我々のような海外在住者にとって参考になると思うので、興味のある方はこちらもご参考ください。
ここが知りたい!高倉式コンポストQ&A集


手応えは…?

「成功しました!」と言いたいところですが、現状は、うまくいっていると言えるかどうか…
基材の違いもあるのか、「2日で生ゴミの分解が終わっている状態」とは言えない様子…

初めてなので全てが手探り状態ですが、発酵の臭いを嗅いだり、温度や水分を見ながら 1日1日の変化を手がかりに進めています。

始めて良かったと思うことは、発酵に関与することによって 自分から環境のサイクルへ働きかけられる事実に気づけたこと。
そして、発酵の過程が とてもゆっくりで目に見えないことによって 自分のリズムをうまく乱してくれていることです。

自分は、もともとせっかちで 熱意に火がつくと、それが初めての時は特に、不完全でもいいから一通りやり切って 全体像を把握しておきたいと感じるタイプ。

いい面もあるでしょうが、猛烈なスピードと濃度で 思考力と行動力を消費してしまうことと、一時的に生存維持に関わる日常的活動の優先順位が低くなってしまうことは問題だと感じます。

その点、発酵は どれだけ焦っても絶対的に時間をかける必要がある。
自分の行動に対する環境からの反応を待つ、熱意を自己コントロールする修練として、自分には必要な作業かもな と感じています。

最後に。
ぬか床の発酵についてこちらで興味深いインタビューを見つけました。

その中で以下のように触れられている箇所があります(以下は要約)。

ぬか床は発酵と腐敗の両方の状態を行ったり来たりすることで独特の風味を獲得していること。
ぬか床の表面が腐りかけたとしても、中に押し込めば大丈夫なだけでなく、逆に味を深めることができる。
発酵と腐敗の境目を出たり入ったりするのが、ぬか床の面白いところではないか。

腸内フローラの理想的なバランスも「善玉菌20%:悪玉菌10%:日和見菌70%」と言われていて、「全て善玉」とか「悪玉一切なし」であるのが ベストな状態ではない。

命の営まれる場所では、良性も悪性も取り込みつつ、揺らぎの中でバランスを探っていくのが 自然であり 真理なのではないかと思ったりしました。

インタビューではさらに以下のように続きます。

“ぬか床にせよ、自分の心にせよ、家族や友達との関係にせよ、制御=コントロールするのではなく、まるでぬか床をかき混ぜるように、主体的に関わることが重要だと思います。
客観的にみると、人はぬか床の中をコントロールしているかに見えるかもしれませんが、主観的な体験としては、まるでペットに餌をあげるかのように、菌の言いなりとも言える状態です。
香りや手触りを通じて菌から発せられるメッセージを感じ取り、『ちょっと待ってね』と手を入れる。
これは生き物同士の関係性だと思うのです。
生き物であるからこそ、自分の生活リズムと同期し、生活の一部になっているような感覚を覚えるし、自分がそこに関わることで、相手が元気になったり、元気じゃなくなったり、能動性が反映される。
コントロールとは異なる能動的な関わりが、おいしさの一部を担っているとも言えます。“

発酵美食 「情報学研究者 ドミニク・チェン ぬか床とコミュニケーションする? 発酵と腐敗のせめぎあいが生み出す豊かさ」より

まだまだ私には未知の感覚ですが、発酵を通して その手触りを少しでも感じられたら面白いだろうなと思っています。